旧宮地研の研究内容紹介(その1:研究室紹介で発表)
高分子は長い鎖状分子で、液体では糸鞠のように絡み合っています。しかし、複雑
な形態を持つ高分子も結晶化します。複雑な形態を持つということは、物理の言葉で
いえば自由度が大きいということです。
私達の研究は
- この様な自由度の大きい高分子や複雑な分子が秩序のある結晶に組み込まれる過程、
すなわち結晶化過程及び形成した結晶の形の研究と、
- 結晶に組み込まれた自由度の大きい分子が、その自由度を発現して引き起こす
結晶の乱れ(格子欠陥)や相転移と、それに伴う多彩な物性の基礎となる構造の研究です。
写真は、ポリエチレンを融液から結晶化した時に見られる、直径約0.1mmの球晶と
呼ばれる構造の偏光顕微鏡写真です。電子顕微鏡で観察すると、分子が何回も折り畳まれた
厚さ数百オングストロームの薄い結晶が中心から放射状に成長しながら分岐し、しかも周期的に捻じれて、
写真で見られる同心円を与えている事が分かります。結晶化温度を変えると結晶は色々な
形になり、結晶と液体の界面で起こる結晶成長の課題となります。高分子鎖の広がりは数百オングストローム
もあり、幅を持った界面が新しい問題です。この様な高分子や複雑な分子の結晶成長と分岐・
捻じれなどの構造を、電子線・X線を用いて研究しています。
最近発見された高分子結晶の示す物性の一つに、強誘電性があります。結晶が自発的な
電気分極を持ち、分極が電場で反転する性質です。私達はX線を用いて、高分子鎖の回転により
双極子が反転する事を見出しました。反転電場をかけると分子鎖の局所的な捻じれ(ソリトン)
が発生し、分子鎖方向に伝播して双極子が回転すると考えられています。この様な分子運動を
複素誘電率の周波数依存性から研究しています。
この様に、私達は高分子など複雑な分子の固体を対象として、長さのスケールでオングストロームから
μmにわたる構造やその乱れを解析し、物性との関連を研究しています。
如何でしょうか?
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turutani@scphys.kyoto-u.ac.jp